東京高等裁判所 昭和37年(ネ)2943号 判決
次に被控訴人は前記1ないし40の商品については被控訴人がその上に動産売買による先取特権を有するから、控訴人においてその代物弁済を否認することはできない旨主張するところ、右番号1ないし40の商品が被控訴人から破産会社に売渡した商品であることは前認定のとおりであり、前掲乙第一号証、前掲証人井沢及び当審証人石井の各証言によれば、その売渡代金額は合計金四十七万七千二百八十円であることが認められるから、被控訴人がその商品の上に動産売買による特別の先取特権を有していたものということができる(右商品の売掛代金債権の全部又は一部の弁済により、右先取特権の全部又は一部が消滅したかどうかについては控訴人のなんら主張しないところであるから判断の限りではない)。控訴人は右商品が破産者に引渡された後は特定することが不能であるから先取特権は認められないと主張するけれども、不特定物の売買だからといつて目的物の特定が当然に不能になるということができないことはいうまでもない。そして前認定のように、右商品の各価額は前記代物弁済の当時以降においては、いずれも売買価格従つて右先取特権により担保される。債権額以上のものではなく、むしろこれを下回ることが窺われるのであるから、被控訴人が破産法上の別除権として破産手続外で右先取特権を実行したとしても、その換価金は右先取特権により担保される被控訴人の代金債権に充当されて残余を生ずる見込の全くない場合であるから、その代物弁済はなんら破産債権者を害するものではなく、従つてこれに対し否認権を行使することはできないものということができる。控訴人は別除権の行使はその担保権の通常の実行方法によるべきであると主張するがそのことは、かような方法によらないでなされた代物弁済に対する否認権の成否に何らの影響を及ぼすものではないから、控訴人の右主張は理由がない。
(仁分 池田 渡辺惺)